ひょっとすると、これは彼女の趣味の悪さだけで片付く問題じゃないんじゃないか? 犯人の目的も何も分からない珍事の後、ややあって俺が辿り着いた一つの疑問。 非常に私的な問題と同時にもしかしたら組織にとっての問題にも繋がるかもしれない。 仮説の真偽を確かめるべく、貴重な休日を使って奴の後をつけ隣町にやってきた。 が。 | |
「撒かれた……?」 | |
アスファルトを叩くのは梅雨を少し先取る雨。 見通しの良くない湿った空気の中、標的を見失い顔を顰めた街角で、 雨宿りでもしにきたのか。 まさに現在調査中の事件に共に巻き込まれたきり、顔を合わせていなかった彼女である。 あまりの偶然に驚くやら。何を話していいか分からないやら。やっぱりどうにも嬉しいやら。 貴重な私服姿に浮かれてる場合じゃないと思いながらも、束の間奴のことも忘れて話に興じ始めた時。 |